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第55話 好きな人(仮)

作者: 酔夫人
last update 公開日: 2026-06-06 11:00:00

『お前が俺以外を好きになるって?』

電話の向こうで恒一が鼻で笑った。

心の底から嘲笑うような、あり得ないと言わんばかりの声音だった。

実花は眉をひそめる。

前の生の自分なら、この瞬間に後悔していただろう。

見栄を張ってしまったとか、勢いで変なことを言ってしまったとか……そう反省して、恥ずかしさに顔を真っ赤にしたはずだ。

だが今は違う。

苛立ちしかない。

方便でついた嘘であり、嘘であることは事実だが、この嘘は恒一が理解しないせいだ。

嘘をつかせられているということ、そして「自分以外を実花が好きにならない」の決めつける傲慢さに苛立った。

どうして自分が永遠に恒一だけを見ている前提なのか。

「ええ、そうです」

『くだらない嘘はやめろ』

「嘘ではありません」

『あり得ない』

恒一の即答に実花のこめかみに青筋が浮いたが、まだ校内、周囲の視線もあるからの実花

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